米山の遠望景観と山岳信仰塔

米山（よねやま）

新潟県柏崎市谷根

　柏崎市と上越市の境にある米山は標高993mで日本三薬師に数えられ、田畑の豊作や雨乞い、人間・動物の守護、海上の安全に霊験あらたかと伝えられ、県内はもとより全国からも広く信仰を集めている。（上越市サイトより）

　米山は上越や長岡をはじめ各地から遠望することができる。以前から「遠くにきれいな山が見えるな」という認識はしていたが、米山の山岳信仰塔（通称：米山塔）の存在を知り、その分布を調べたいと思うようになった。地理学の世界では、富士山を見ることができる「富士見町」といった地名の分布や、「富士山可視マップ」といった物理的に見える範囲の研究は盛んだ。一方、地域地理学のうち人文地理学、とりわけ歴史地理学の分野では出羽三山などの山岳信仰塔の分布に関する研究も行われている。

　新潟県内では米山を始め、妙高山、八海山、苗場山、弥彦山が、県外の山では出羽三山（月山、湯殿山、羽黒山）や富士山、御嶽山などの山岳信仰塔が見られる。米山を直接見ることができない遠方の集落においても米山塔の分布が見られ、米山講の分布は広く県下に及んでおり、その数は400余りとされている。

　市町村史や博物館資料などでその分布を知ることができるが、昭和から平成の始めにかけての分析が多く、○○地内や△△神社といった表記しかされていないものが多い。そこでグーグルマップ上で正確な位置情報を記録し、中越地震などの自然災害による移動、住宅・道路開発による移動も調査しようと考えた。この米山塔探しは新潟の道路探索屋のライフワークとしていきたい。

長岡市花井町の広域農道1号線より望遠レンズで撮影。冬の朝、澄み切った空気の中で米山の存在感が際立つ。米山山頂より38.5キロ

柏崎市椎谷の椎谷観音堂付近より。山頂より24.3キロ。

上越市五智5丁目の居多ヶ浜より。直江津港越しに米山が望める。山頂より26.5キロ。

同じく居多ヶ浜より望遠レンズで撮影。

長岡市の川東地区、川中よりドローン空撮（ドクターヘリ運航時間外に撮影）。山頂より40キロ。

見附市名木野町のなぎの湯跡付近からドローン空撮。山頂より46.7キロ。

北陸道下り線、潟町から柿崎の間373.1kp、上越市柿崎区馬正面付近より。ここまで来ると米山が間近に見える。山頂より9.2キロ。

上越市大形区内雁子新田の県道30号線より。冬季に除雪しきれない農道に駐車して撮影。左に見えるのが米山、右は尾神岳。米山山頂より12キロ。

米山塔のパターン

　柏崎市立博物館の『柏崎の山岳信仰塔』によると、米山塔の碑文には①「米山薬師如来」、②「米山薬師」、③「米山塔」、④「米山」、⑤「その他」のパターンがあり、造立年の推定に役立てられている。米山塔の多くが農村部の講中による造立で、稲作信仰のものが多いが、中には回船関係や酒造関係など生業との関わりも様々である。

　ここでは、新潟の道路探索屋が撮影した米山塔のうち上記パターン別、生業別、さらに特徴的なものを紹介する。また、新潟の道路探索屋が調査した「米山信仰に関する石碑MAP」をこちらで公開し、随時追加している。